ラオスコーヒーティピカをブロックチェーントレーサビリティで販売することのメリットとデメリット

ラオスコーヒーティピカをブロックチェーントレーサビリティで販売することのメリットとデメリット

あまり聞かれな言葉ですが、「ブロックチェーントレーサビリティ」がなぜ必要なのでしょうか?

「ブロックチェーントレーサビリティ」を活用することで、なぜラオス農家の収入の安定を図るためのソリューションの軸となるのでしょうか?

そもそも、「ブロックチェーントレーサビリティ」とは、どんなものでしょうか?

本格的な説明になると、学術的な論文になってしまいますので、ここでは簡単にその説明をしていき、「ブロックチェーントレーサビリティ」がラオスのコーヒー産業の活性化及び拡大につなげるためにのソリィーションになりうることについて書いていきます。

ブロックチェーンとは?

「ブロックチェーントレーサビリティ」のブロックチェーンとはなんでしょうか?

ブロックチェーン(Blockchain)とは、複数のコンピューターを利用した分散型ネットワークと暗号型技術を組み合わせ、取引情報を同期させて記録する技術になります。

一定期間の取引情報をブロックと呼ばれる単位でまとめ、複数のコンピューターで検証しながらチェーンのような鎖で繋いで蓄積します。

ブロックに分けられたデータは、暗号化さえたうえで、ブロックチェーンを利用しているユーザーが分散して保管し、必要な時に再構成する仕組みになっているため、分散管理されていてもセキュリティは保たれています。

そのために「ブロックチェーン」とは、別名「分散型台帳(※)」とも呼ばれています。

(※)台帳とは?

「台帳」という言葉はよく聞かれると思います。

では、「台帳」とはどんなものでしょうか?

「台帳」とは、何かの記録を残しておくためのものになります。

例えば、「売上台帳」ならば、それまでの売上が記録されており、「住民台帳」となると、住民についての情報が記載されていることになります。

例えば、従業員1人、社長1人の会社があったとします。

社長は、毎月決まった日に1人だけの社員さんの銀行口座に給料を支払います。

この振込によって、会社の銀行口座には振込方として、社員さんの銀行口座には振込先として記録されます。

銀行は、その記録を会社の口座と従業員の口座に、それぞれの記録として保存していくことになります。

毎月、給料振込りをする度に、取引情報(日付、時間、金額など)が刻まれた記録が残っていきます。

毎月の取引情報が「ブロック」として、保管されていきます。

会社も従業員さんの方も、送金と受領を確認できるので、従業員さんが「今月の月給を支払ってもらっていない」と申し立てても、記録が残っていますので、その申し立てに異議申し立てすることができます。

従業員さんが、副業を持っていて場合には、確定申告の必要がありますので、会社からの給料振込記録(ブロック)を提出することになります。

その時は、ブロックが時系列順につながって状態で表示されることになりますので、あたかもチェーンでそのブロックがつながって見えるところから「ブロックチェーン」と呼ばれることになります。

トレーサビリティとは?

トレーサビリティ(traceability)とは、英語の「trace:追跡」と「ability:できること・能力」を合わせた造語で、「追跡できること」になります。

ここで言う追跡とは、原材料や生産過程に関する情報になります。

消費者や関係業者が、製品の情報を手軽に追跡できれば、安心して製品を取引・購入することができます。

トレーサビリティを確立するということは、製品の出どころをはっきりさせるとともに、その流通過程を明確にし、立場の弱い生産者の保護及び消費者に対しての偽装行為ができないようにすることです。

トレーサビリティが確立されていれば、商品ごとに、生産から売り場までの履歴が明確になることから、トラブルが発生した場合には、速やかに商品を回収したり、履歴をさかのぼって問題がある生産者や加工業者を特定して原因を取り除いたりすることができ、迅速かつ正確な対応が可能になり、立場の弱い生産者に対しては、買い取り業者から適正な購入価格を提示させることが出来るようになります。

食の「ブロックチェーントレーサビリティ」とは?

上で説明した、「ブロックチェーン」+「トレーサビリティ」を掛け合わすことによって、透明性がある食の流通が確保できるようになると考えらています。

近年、食品に対しての安心・安全の意識が高まって食の安全に対する意識が高まってきました。

例えば、スーパーなどで、鮮生食料品を購入する際に、産地名(日本産か外国産)を確かめてから購入されている方は多いのではないでしょうか?

外国産なら、日本産と比べて若干の味の違いがある分、安く大量に購入できるメリットがあり、反対に日本産の場合には、甘みとうま味が増す分、お値段が割高になることがあると思います。

それぞれの目的、用途によって消費者が品物を選ぶことができます。

ただし、鮮生食料品の産地は大まかなものしか表記されておらず、どのような管理を経て、いま手元にあるのかは全く分からないのが現状です。

安い特売品の食品がなぜその価格なるのかの根拠を知ることはできません。

こうした状況は、安全な状態といえるのでしょうか?

また、加工食品の場合には、原料や添加物がパッケージの表示内容を参考にして購入する場合もあるでしょう。

仮に、タルタルソースなどに入っていいるキュウリのピクルスが、「いつ、どこで、誰が、どのようにして」栽培した何という品種のキュウリであるかまでは分かりません。

それら全てに透明性を持たせ、消費者が目で見て分かるようにすることが、食の「ブロックチェーントレーサビリティ」の目的になります。

信頼関係で成り立っている食文化

他の業種と比較した場合に、食料品に関しては不透明な事柄が多いです。

スーパーなどで売られている商品の中では、多くの食料品や加工食品の原料や産地がはっきりしていないことが多いです。

自動車製造業の場合には、全ての部品に対して、ロット番号という識別番号が付けられていますので、どの工場のどの生産ラインで生産されたものかなどを確認することができます。

販売されている車に不具合が出た場合には、調査し不具合場所を見つけ出し、同じ不具合が起きる可能性がある製品をすぐに特定でき、責任の所在を明確にすることが可能であり、不具合部品の回収、再造することができます。

これに対し食品の管理体制は、真逆の状態です。

食品の産地や加工食品の原材料、製造過程は、消費者にとっては、全くわからないのが現状です。

現状における食品販売は、信頼関係で成り立っていると言っても、過言ではありません。

そのために、産地偽装や販売されている食品が原因で健康被害についての報道が定期的にされているのが現状です。

それらを防止し、食の安全、安心を確保するためにも、「ブロックチェーントレーサビリティ」が必要となってきています。

なぜコーヒー栽培に「ブロックチェーントレーサビリティ」が必要なのか?

生産者によって作られてコーヒー豆が消費者の手に入るまでは、いくつもの業者を介することになります。

そのために、曖昧な会計や原産地の虚偽など不正の横行が多く行われる場合があります。

生産者から消費者の手に渡るまでに、多くの業者を介することによって、原産地の偽装や不当な値段設定が発生することもあり、それを防止するとともに、生産者の保護にもつながる「ブロックチェーントレーサビリティ」システムが必要になってきます。

ブロックチェーントレーサビリティを導入することにより、生産から輸入・販売までのすべての工程において誰が関わりチェックをしたのかを明確にでき、プロジェクトの基準をクリアした高い品質であることを証明することが可能となります。

流通においては、事業者よりも弱い立場にあることから、適正な価格での取引が難しい立場にあります。

苦労してコーヒー豆を生産した農家は、どこで、どのようにして、自分たちが作ったコーヒーが売られて、最終的な値段はわからないままになります。

そのことにより、ラオスなどのコーヒー生産者は、自分たちが作ったコーヒーがどのように流通し、誰が飲んでいるのかということには無関心になってしまいます。

その結果、生産者はコーヒーの品質に関しては、ほとんど関心を持つことがなり、それは生産意欲の減退にもつながっていくことになってしまいます。

ラオスでのコーヒー生産は、そのほとんどが、人材や機材を有していない家族単位による農家がほとんどです。

作られた豆は市場価格に左右されることなく、契約農家から直接買い取ることによりフェアトレード(適切価格での取引)が可能となり、農家の適正所得の安定化に繋がります。

ラオスコーヒーティピカをブロックチェーントレーサビリティで販売することのメリット

「ブロックチェーントレーサビリティ」を活用することで、ラオスの農家にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?

「ブロックチェーントレーサビリティ」を利用することによって、ラオスのコーヒー生産者のみならず、消費者である私達にもメリットがあるのでしょうか?

ラオス農家にとってのメリット

家族での極小規模による農業形態であることから、生産したコーヒーを買い付け業者へ卸す際にも、弱い立場から安い買い取り価格での取引が横行しているラオス農家にとっての「ブロックチェーントレーサビリティ」を利用することにより得られるメリットは下記のようなことがあります。

サプライヤーとしての信用を得られる

農作物をサプライチェーンで管理することで、現地の農家が企業とのサプライヤー(※)であることを証明できるようになり、収入証明もできるようになり銀行口座もできるようになります。

それにより、事業拡大や人員の雇用も可能になってくる。

(※)サプライヤーとは?

サプライヤーとは、仕入先や 供給元をさす言葉になります。

スーパーが農家から野菜を直接仕入れると、農家がスーパーのサプライヤーになります。

または、農家とスーパーの間に卸売業者が入ると

農家→卸売業者→スーパー

という形になりますので、卸売業者にとって農家がサプライヤーになり、スーパーにとっては卸売業者がサプライヤーになります。

トレーサビリティが確保されている場合には、サプライヤーとしての取引状況が目で見ることができるようになりますので、信用力のない小規模な農家であっても、融資を受けれる可能性がでてきます。

海外酒造メーカーの「AB InBev」はアフリカの農家に対して、自社のサプライヤーであることをブロックチェーン上のデータを用いて証明するシステムを導入することによって、従来は銀行口座開設が困難だった小規模農家が銀行口座を開設でき、融資を受けられるようになっています。

もともと、農業は自然や天候等の成り行きで、収入の見込みが立てずらく不安定な業種ですが、サプライヤーとしての実績を可視化させることで、融資やサポートを受けやすくなります。

既に動いているコーヒー豆のサプライチェーン化

「スターバックス(Starbucks)」の取り組み

「スターバックス(Starbucks)」は2019年5月にMicrosoftと協力して、コーヒー豆のサプライチェーン・マネジメントにブロックチェーンを導入する取り組みを始めています。

構築されたシステムでは、小規模農家から輸送業者、製造工場、配送業者、販売店へとコーヒー豆が移動していく各地点で、IoTデバイスで読み取った情報をブロックチェーンに書き込み、共有されます。

Starbucksの利用者は商品のバーコードをスマホでスキャンすることで、コーヒー豆を生産した農家や焙煎場所などの情報を閲覧できます。

サプライチェーンの透明性や追跡可能性を向上させることで、倫理的な公正取引を促進することが可能になります。

IoT(Internet of Thingsの略で読み方は「アイ・オー・ティー」です)

Internet of Thingsは、物のインターネットという意味になります。

物にセンサーをつけ、センサーが取得した情報を活用できるようにすることです。

それは、センサーからインターネット等の通信ネットワークを通じて情報を送ることで、わざわざその物を見に行かなくてもパソコンやタブレット、スマホなどでデータを確認することができたり、データを蓄積することができたりするようになります。

「IBM」の取り組み

IBMは、コーヒー産業の流通、販売には、多くの企業や協同組合、輸出業者、荷送人、輸入業者、焙煎業者、流通業者、小売業者がかかわっている大規模な市場なために、トレーサビリティの実現は困難であると考えました。

「IBM」と「Farmer Connect 」は、直接情報を引き出す消費者向けアプリ「Thank My Farmer」を開発し、ユーザと農家、取引業者、焙煎業者、を結び付けることを可能にしました。

「Thank My Farmer」を利用することによって、コーヒーサプライチェーン全ての関係者を結び付け、情報や支払いのやり取りと追跡を簡素化し、信頼性を高めることを目的としています。

このテクノロジーは変更ができない永続的にデジタル化されたトランザクションチェーンを作成し、ネットワーク上の各関係者はデータの正確なコピーを持ち、ブロックチェーンへの追加は各参加者の許可レベルに基づいてネットワーク全体で共有されます。

農家、卸売業者、取引業者、小売業者は包括的でリアルタイムに近いデータアクセスによって効率的なやり取りができ、消費者は自分が消費する製品の原産地等について知るとができるようになります。

小規模農家のブランド化

一部の国による不適切な食材の取り扱いにより、汚染された食材の混入や国内でも一部の企業による偽装行為により食の信頼が揺らぐ出来事が多く起こっています。

フランスの大手小売チェーン「Carrefour(カルフール)」では、ブロックチェーンによって産地からスーパーまでの来歴が見えるようになっており、商品の売り上げがアップしたと報告されています。

売り上げがアップした食材がそのまま生産者としてのブランド化になり、信頼獲得にもつながってきています。

高級品のティピカの生産過程(無農薬等)もわかるように記録されることにより、高い付加価値を併せ持つことになります。

コーヒーの生産段階でも、IoTの活用によって、以下の情報を消費者に伝えていくことが可能になります。

  • 産地や品種
  • 生産方法(農薬や肥料の使用頻度及びその量)
  • 生産された自然状況(天候や土壌)
  • 物流にかかった時間
  • 移動時の温度管理等

などを記録していくことにより、農家一軒一軒の差別化、ブランド化を図ることができるようになります。

新しいシステムによるラオスのコーヒー作りには必要なのか?

「なぜ、そのうような新しいシステムによって、コーヒー作りと市場に出す流通システムが必要なのか?」

と思われる人もいるでしょう。

そんなよくわからないシステムを使わずに、誰かが適切に管理して、コーヒー作りと流通を管理したらいいのではないのかと。

今までの様な販売方法では、どうしてもラオスとは関係のない国や人達の統制が必要になります

それでもいいかもしれませんが、未来栄光、ラオスの人達にとって、自分たちの未来を関係のない人たちにゆだねることになり、自分たちの未来を自分たちで作り上げていくことが出来なくなります。

中央主権的な運営ではなく、コーヒー農家の人達が自分たちの意思で、コーヒーを作り上げていくことを可能にするためにも、「ブロックチェーントレーサビリティ」が必要なシステムを考えられてます。

消費者にとってのメリット

「ブロックチェーントレーサビリティ」を使うことによって、恩恵を受けるのは、生産者だけではありません。

私達、消費者にとってもメリットがあります。

食品の透明性の確保

自国内で、全ての国民に対して食料を供給することは、現在不可能になり、外国からの輸入が必須になっていますが、遠く離れた外国から食材を新鮮、安全な形で消費者に供給することは容易なことではありません。

これが、加工食品ならば、原材料の生産から加工、輸送し、卸を経て小売店に届くまでには、膨大な時間と手間がかかります。

輸入した食品で不具合が出た場合には、消費者にとっては、命に係わる重大な事故に発展する可能性がでてきます。

また、生産者から消費者までに届く間には、多くの業者が介在していることから、食品偽装も起こることがあります。

食の安全、安心の確保は、生産者、流通業者、販売者にとって、倫理問題にかかわる重大な課題になってきます。

日本はもちろんのこと外国でも、ある程度の規制はあるものの、企業及び個人における倫理感に頼ざる得ないのが現状です。

我々消費者が目にできる情報といえばパッケージやスーパーマーケットなどのパッケージに表示されている情報のみで、絶対的な情報ではありません。

ブロックチェーンは、関係者全てがアクセスでき、なおかつ改ざん不可能なデータベースとして活用し、サプライチェーンの透明性を高めようという取り組みが始まりつつあります。

サプライチェーンの情報を目に見えるようにすることで、食品の追跡調査が迅速に行われることにより、食中毒などが発生した場合には、原因究明や迅速な対応を行うことが可能になってきます。

これまで不透明な部分が多かった食品流通がブロックチェーンを導入することによって、食品と共に安全、安心を消費者に提供できるようになります。

データーの改ざんの難しさ

最大のメリットとして挙げられるのが、データーの改ざんの難しさが挙げられます。

ブロックチェーンに書き込んだ情報は、高度な暗号技術を用いることで改ざんがほぼ不可能なかたちで保存することができます。

複数のコンピューターでつながっていることから、ハッキングなどにより、データが勝手に改ざんされるリスクが旧来のデーター保存よりも、改ざんの可能性が極端に低くなります。

「ブロックチェーン」と「ビットコイン」の関係

利用者が多いビットコインなどの仮想通貨がハッキングされることなく世界中で利用できるのは、ブロックチェーンによるものです。

暗号資産(仮想通貨)の大半は、中央管理者を置かず分散化されたノード(※)でデータがそれぞれ保管されれています。

「分散型ネットワーク」と呼ばれている、複数ノードがP2P(※2)で通信し利用者全員でデータを管理する形をとっています。

ブロックチェーンで取引を記録する際、取引データがネットワーク上に公開され、参加者全員が取引記録の正当性を検証し、合意によって有効化されますので、二重払いなど不正の記録を排除することが容易になります。

取引データは大量に分散化されたノードで保管されるため、一部のノードで記録の改ざんが行われた場合でも、ネットワーク全体の記録まで改ざんすることは極めて困難とされています。

さらに、一部のノードがサイバー攻撃を受けデータが破壊された場合でも、他の複数のノードではデータが保存されているため、データの復旧は可能になります。

すべてのノードが同時に破壊されない限りブロックチェーンのサービス停止はほぼなく、現状実質的には「ゼロダウンタイム(※3)」となっています。

※ノードとは?

ネットワークに能動的に接続されている電子デバイス、コンピュータなどを指します。

(※2)P2Pとは?

P2Pとは、Peer to Peerの略称で、 世の中にあるたくさんのネットに接続できる端末がサーバーを使わずに端末同士でファイルの共有やデータ送信ができる通信技術のことをいいます。

その際、ネットワークに接続している端末 (パソコンやスマートフォンなど) を「ノード」と言います。

ノードが接続し合っているネットワークをP2Pネットワークと呼んでいます。

(※3)ゼロダウンタイムとは?

ゼロダウンタイムとは、サーバダウンが発生しない状態のこと。

ブロックチェーントレーサビリティで販売することのデメリット

良い事づくめの「「ブロックチェーントレーサビリティ」ですが、デメリットがあります。

先に、データーの改ざんの難しさを説明していますが、データの入力時点で人為的な産地偽装が行われると対応できません。

この部分に関してはIoTデバイスと連携させ、位置情報などを人手を介さず自動的に書き込める仕組みを構築することで、誤入力や改ざんリスクを最小限に抑えることが必要になってきます。

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